黒服バイト 高級ラウンジ それは魅惑の世界 第7話 アフター
前回まで
さて
恵子さんの紹介で新しい店に行くことになった肉(私)。打ち上げの次の日、正午に恵子さんと待ち合わせをし、そのお店に向かう。
そのお店は、祇園の南、少し外れたところにあった。外から見たところ三階建て、日本風の一軒家といったところだ。恵子さんのお店より少し小さいが、綺麗に見える。
中に入ると、これまた一話と同じようにおばあさんが立っていた。おばあさんと言っても、見かけは60代半ばほどに見えるが、弾けるオーラを放っていた。小さい人だったが、非常にエネルギッシュで、若々しく見える。
近影
よろしくお願いしますとあいさつすると、その人は「よろしく。ママの町子です。」といい、二階に通してくれた。
お店の中は、大きくはないが、とても綺麗だった。
三人で座り、町子さんがお店のことを話し出す。時給は1000円、営業時間は夜の8~1時、女性は社員が6人、バイトが3人。黒服の仕事は10年間ほどいる50代後半のチーフが一人でやっている。というようなことを聞いた。肉にやってほしいのはそのチーフのアシストだということだ。
そして最後に、「明日から来れる?」という質問にはいと答え、その日は終了した。お店を後にし、恵子さんにお礼を言って別れた。恵子さんとは、それきり会うことはなかった。
そして翌日から仕事は始まった。やることは前とそう違わない。お客さんが来たら席に案内して、おしぼりを女性に渡し、ボトルと氷と水を用意する。チーフが用意するチャーム(お菓子)を出したら終了。あとは氷と水がなくなったら替え、灰皿が埋まったら下げて、たばこを買ってきてほしいと言われたらコンビニに買いに行く。楽なものだった。
女性もチーフも皆いい人で、まだペーペーの肉にも優しく接してくれた。
素晴らしい職場だと思った、しかし、、、、、、、、
事件は起こった。
働き始めて二週間ほど経ったある日、、、、
いつものようにお店に着いてチーフに挨拶すると、チーフは言った。
「俺、今日で終わりだから。」
「え?」と思う暇もなくチーフはその日本当に準備だけをして帰り、なんと一週間後に亡くなった。
アフターについて
前回、同伴というシステムについて書いたが、アフターはその逆である。つまり、同伴はお店に女性と一緒に入ることだが、アフターはお店で飲んだ後、女性と一緒に店を出ることである。
お店で飲んでアフターで出るころには大抵12時を過ぎている。深夜にお気に入りの女性と一緒に夜の街に繰り出すのである。そう、なんだか同伴に比べて魅惑の響きがある。
これに店側は料金をかけない。お店が終わってからの話なので、アフターは女性とお客さんとの間のことで、お店には関係ない、といったスタンスだ。
アフターでは、まずほとんどの場合バーに行く。そのバーは大抵女性のよく知っているバーである。バーではバーテンダーを絡めて話をすることがほとんどであり、新しいところにいくといちいち自己紹介から始めるのが面倒なので、事情を知っている、決まったところに行くのだ。
バーテンダーもプロであるので、前回他のお客さんと来たとか、女性が困るような情報は決して言わない。うまく空気を作り、話を盛り上げる。バーに2時間もいれば、次のことを考える時間となる。他のバーに行くのか、今日はもう帰るのか、もしくは、、、、、、、、、。
お客さんは、当然アフターしたい。また、もともとアフターのために来店するお客さんも多い。アフターしたいといえば、女性は用事がない限り断らない。
アフターはほとんど二人だけの時間だ、そりゃお客さんからすればここがチャンスに決まっている。ここ一番である。
しかし、一緒に働いていた女性はこう言っていた
「いかにギリギリのところで近づかせないようにするかが、この世界のコツなのよ。」
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