高貴な桃太郎 第四話
サルの墓を作り、桃太郎はまた旅を始めます。犬々と共に、また多くの谷を越え、山を越え鬼のすみかまであと少しというところまで来たとき、雉の大群に出会いました。大群は声を合わせて言いました、「桃太郎さん桃太郎さん、お腰に付けたきびだんご、一つ私に下さいな。」
桃太郎は言います。「ありません。このやり取りは三回目です。」雉は飛び去りました。
「行ったか、やはり全てのものは留まらないのだな」
ゆく川の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとどまりたるためしなし。
桃太郎は方丈記の一節を思い出し遠い目をしておりました。(時代がメチャクチャである。)
かくして、とうとう桃太郎一行は鬼の住処にたどり着きました。
ここまで厳しい道のりだったので、犬の数は10頭まで減っておりました。犬が死ぬたび、桃太郎は小さな墓を作り、帰りはこの墓をたどって帰ればいいやと思っておりました。犬々はなんて邪悪な人だと恐々としながらついていきました。