NIKUMAN総回診

ポン酢付けりゃうまい

高貴な桃太郎 第三話

 やがて犬への説法を終えた桃太郎は立ち上がり、旅を再開しました。犬々もまた立ち上がり、これへ続きました。日照りの砂の大地を越え、極寒の山をやりすごし、少しづつ鬼へと近づいていきました。荒れ果てた森に差し掛かった時、一匹のやせこけたサルに出会いました。曰く「桃太郎さん桃太郎さんお越しに着けたきびだんご、一つ私に下さいな」

 桃太郎は座り込み、目を閉じて言いました。「かわいそうに、何日も何も食べておらず、見えるはずがないものが見えているのだな。さぞ苦しいだろう、だが、聞きなさい。生けとし生きるもの皆すべてが苦しみを抱えている。お前だけではない。世の中には様々な苦しみがある、その一つに愛するものと別れることがある、これを愛別離苦という。この苦しみは飢えに匹敵するであろう。これを味わっていないだけ、お前は幸せではないか。また、何物にも代えがたい最上の苦しみが、死である。死とは何なのか、どうすれば死を免れられるのか、これを知るために私は旅をしている。さあお前もともに来なさい、死から逃れたいだろう。」言い終わり、桃太郎が目を開けると、サルは死んでいました。

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桃太郎は驚き、恥ずかしくなり顔が赤くなりかけましたが、犬々が見ている以上表に出すまいと平生を装いました。

 そして苦し紛れにこう言いました。「死体であろうと生きたものであろうと教えを乞うものには説法をする、これが私のやり方だ。サルよ、お前はやがて生まれ変わる。これを輪廻転生という。新たなる命となってまた会おう。」

 犬々はすべてを聞かないふりをしてあげていました。