灰は海に撒いて
今週のお題「理想の老後」
老後ってどれくらい時間があるんだろうか。ていうかいつからなんだろう。
常識なしクソゴミ野郎の私は定年すら知らなかったので検索した。
ポチポチ
ああ、65歳から死ぬまでを老後って言うのか。結構時間あんだな。
人間は40年とかそんな未来のことは自分の事であっても、そこまで真剣に考えることはできないだろうから、老後について考えようとするとどうしてもファンタジーになる。
一番最初に老後の生活をイメージしたのは確か中学2年の頃だった。
寝る間も惜しんでオンラインゲームでレベリングをしていた私は、すべての時間をオンゲに詰め込めたらどんなに幸せだろうと、老後を想った。
「おじいになったらオンゲだけしよう」と強く誓った。
バカみたいな考えだが今思うと結構悪いアイデアではない。
指だけでプレイできるオンゲは身体が動かなくなっても楽しめるし、年齢も隠せるので友人も作れ、会話も出来る。頭もボケない。
意外と合理的なんじゃないか。
人生で老後について考えたことは今までそれくらいで、今回は二度目となりそう。
今は病院で働いているので、老人を大量に見る。
それはーーもうキッツイのだ。歩くことはもちろん、喋ることも出来ないし飯も食えない。
常に機械や謎の管まみれだ。ビジュアル的にも最悪だ。
そして普通に突然死ぬ。
申し訳ないがそんな度に、ヤベーーーーーー、ああはなりたくねえよと思ってしまう。
やっぱり健康でいるのがまずは一番大事であり理想なのだ。
その上でどんな老人が幸せなのかと思いを馳せてみる。
しかし、、、、、、、、
幸せそうな老人て一人もいないのだな。病院にいる人はもちろん、道行く人もちっとも幸せに見えない。
ダメだダメだ。つまり、身近で考えてはダメなのだ。目を閉じてもっともっと遠くにイメージを飛ばすのだ。自分の近くに幸せは無い。
そう、外国のビーチだ。ヤシの木だ。夕暮れだ。そこでは波が静かにさざめいている。
そこに人影は無い、、、、、、
と思ったがなんだあれは、、、、、
車椅子とそれを押す女性の人影。
ああ、あの車椅子に座っているのが私だ。
そしてそれを押しているのが妻ってところか。
いや、、妻にしてはやけに若いな。そしてブロンドヘアーだ。
まさか愛人か?それも外国人の。
凄いな私は、外国人を愛人にしているのか。
私が「フガフガ」 というと愛人は微笑み、クルリと向きを変え家へと帰る。
家は超高級ホテルの一室だった。ホテルマンが二人に深々とお辞儀をする。
私の部屋に着き、黄金の扉を開ける。そこにはなんと大量のブロンドヘアーが。
1,2,3、、、、、6人もいる。車椅子を押してた愛人と合わせ、7人の愛人を私は囲っていた。
愛人達は大喜びで私を迎え、シャンパンを抜く。ポーーーーン。
パーティの始まりだ。
豪勢な料理とシャンパンを、7人のブロンドヘアに囲まれながら、海の見えるホテルの部屋で頂く。
愛人達は料理を私の口に運び、シャンパンを飲ませる。
私はお礼のつもりで「フガフガ」 と言い、愛人はにっこりと微笑む。
素晴らしい時間だ、人生だ。
いつしか私は眠りに落ちる。
愛人達は私を優しくベッドに運び、静かにパーティを続ける。
翌朝
海に朝陽が反射し部屋に差し込み、ブロンドは次々に目を覚ます。
そしてみんなで私を起こしに来る。今日はボート遊びの予定なのだ。
しかし、、、、、、、、
私は起きなかった。
昨晩の幸せの中で死んだのだ。
ブロンド達は私の死に気付くも、誰も狼狽えはしない。常日頃からこの日のことはきちんと言い聞かされていたのだ。
「フガフガフガフガフガ」(私がもし死んだら,その灰は海に撒いてくれ。)
ブロンド達はその日の夕方、ビーチに集まる。
一人の手には、ビニル袋に入った私の灰が。
それを両手に取り、全員で息を吹く。
フー × 7
私の灰は海へと消えた。お別れだ。
ブロンドのうち一人が、こう言う。
「あなた、泣いてるの?」
「いいえ、灰が目に入っただけよ。」
.......。
何これ
俺はバカなのか。